Q:年次有給休暇は、発生した年だけしか使用できないのでしょうか?
もし、繰り越しができるとすれば、何年繰り越しができるのでしょうか?
A:労働基準法では、年次有給休暇の時効を、2年としています。したがって、年次有給休暇は、翌年度に限って、繰り越しができます。
なお、年次有給休暇の時効について、行政通達では、次のように示されています。
「問 有給休暇をその年度内に全部をとらなかった場合、残りの休暇日数は権利抛棄とみて差し支えないか、又は次年度に繰越してとり得るものであるか。
答 法第115条の規定により2年の消滅時効が認められる。」(昭22.12.15基発501号)
【年次有給休暇の繰り越しの計算】
ここでは、週40時間働く正社員の場合を考えてみます。
勤務年数が6か月の時点で10労働日の年次有給休暇の権利が発生します。
次の年次有給休暇が発生する1年6か月までの間に5労働日使用した場合、残りの5労働日は翌年の分に繰越ができます。
勤務年数1年6か月の時点では、11労働日の年次有給休暇の権利が発生します。
この11労働日と繰越の分5労働日を足した、合計16労働日を2年6か月までの間に使用できることになります。
そして、6年6か月以上継続勤務した場合は20労働日の年次有給休暇の権利が発生しますので、最高20労働日+20労働日=40労働日の権利を有することができます。
【時効の問題】
年次有給休暇の時効は、2年ということですが、この場合の時効とはどのようなものなのでしょうか。また、年次有給休暇の繰越しとは、どのような関係があるのでしょうか。
そもそも時効とは、次のようなものをいいます。
時効(じこう)とは法律用語の一つで、ある出来事から一定の期間が経過したことをおもな法律要件として、現在の事実状態が法律上の根拠を有するものか否かを問わずに、その事実状態に適合するよう権利または法律関係を変動させる制度。(ウィキペディア「時効」より引用)
これでは抽象的すぎてわかりづらいのですが、簡単にいうと、ある出来事から一定の期間が経過すると権利が無くなったり、又は権利が発生したりすることをいいます。
労働基準法の時効については、労働基準法第115条に次のようにあります。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
このことから、年次有給休暇の時効は2年となります。
前述の時効の考え方を年次有給休暇に当てはめて考えると、まず、年次有給休暇の権利というのは、雇入れの日から起算して、6か月間継続勤務しており、その期間の全労働日に8割以上出勤したときは、その労働者は、10労働日の年次有給休暇を取得する権利を得るわけです。
その権利を取得した日(雇入れの日から6か月経過した日)から2年で年次有給休暇を取得する権利もなくなってしまいます。しかし、逆に「労働者は、その2年間のうちに年次有給休暇を取得することができる権利を持っている」とも言い換えられます。
そして、年次有給休暇の権利(すなわち取得できる日数)は、初めて年次有給休暇の権利を取得した日(雇入れの日から6か月を経過した日)から1年ごとにさらに発生していきます。
例えば、雇入れの日から1年6か月経過した日には、その日前1年間に年次有給休暇を全く取得していなかった場合、この日に新たに取得した11労働日と1年前に取得した10労働日を合わせて、21労働日の年次有給休暇を取得する権利を持っていることになります。このため、1年ごとの繰越しという考え方が必要になるのです。