労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準によります。(労基法13条)

(例1)労働契約時に「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」と契約した場合

労働基準法第37条では、法定労働時間を超えて時間外労働をさせた場合は、2割5分以上の割増賃金を支払わなければならないとしていますので、この例では労働基準法に違反しています。

このときは、「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」という契約は労働基準法に定める基準に達していないわけですから、この契約は無効となり、「時間外労働に対しては2割5分以上の割増賃金を支払う」という契約をしたことになります。(すなわち、使用者に割増賃金の支払い義務が生じます。)

(例2)パートタイマーとの契約時に「パートには年次有給休暇制度はない」と契約した場合

年次有給休暇について労働基準法39条では、雇入れ後半年間継続勤務して80%以上の出勤率の場合は、10労働日の年次有給休暇を与えなければならないとしていますので、この例では労働基準法に違反しています。

このときは、「パートには年次有給休暇制度はない」という契約は労働基準法に定める基準に達していないわけですから、この部分は無効となり、労働基準法で定める要件を満たしている場合は、法定日数の年次有給休暇を与える必要があります。

解雇予告手当や休業手当、年次有給休暇中の賃金などは、平均賃金を元にして計算します。(労基法12条)

1.原則的な平均賃金の計算方法

平均賃金の計算方法は、原則として

(平均賃金)=(算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金の総額)/(算定事由発生日以前3か月間の総日数)

で計算します。

※賃金締切日があるときは、原則として、その直前の賃金締切日から起算します。

例えば、算定事由発生日が6月13日で、賃金締切日が5月31日の場合、3月1日から5月31日の期間で平均賃金を算定します。

この平均賃金は銭単位未満の端数が生じた場合は、切り捨てます。(昭22.11.5基発232号)

実際に、解雇予告手当や休業手当、年次有給休暇中の賃金などを支払う場合は、1円未満の端数を四捨五入します。(通貨の単位及び紙幣の発行等に関する法律)

平均賃金を計算するときは、次の期間とその賃金は、「総日数」と「賃金の総額」の両方から控除します。

  • 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
  • 女性が産前産後の休業をする期間
  • 育児休業又は介護休業した期間
  • 試みの使用期間

また、算定期間中の次の賃金は「賃金の総額」から控除します。

  • 臨時に支払われた賃金(私傷病手当や見舞金など)
  • 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの(現物給与)

2.請負や日雇労働者などの場合の平均賃金の計算方法

平均賃金を算定するとき、賃金を日、時間によって算定する場合や出来高払いその他の請負制によって定められる場合は、原則的な平均賃金の計算方法とは少し異なります。

原則的に平均賃金を計算した金額と次式を計算した金額のいずれか高い方が平均賃金となります。

(最低保障額)=(算定期間中の賃金の総額)/(算定期間中の実際に労働した日数)*60/100

また、賃金の一部が月、週、その他の一定の期間によって定められている場合は、次式を使用します。

(最低保障額)=(その部分の賃金の総額)/(その期間の総日数)+(算定期間中の賃金の総額)/(算定期間中の実際に労働した日数)*60/100

また、これが日雇労働者の場合は、次式を使用します。

(平均賃金)=(1か月間に支払われた賃金総額)/(1か月間にその事業場で実際に労働した日数)*73/100

これで算定できない場合は、

(平均賃金)=(1か月間に同一業務に従事した日雇労働者に支払われた賃金総額)/(1か月間にその事業場で労働した日数)*73/100

となります。

3.雇い入れ3か月未満の場合

雇い入れ後3か月に満たない者については、計算期間は雇い入れ後の期間になります。

労働基準法でいうところの賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。

整理すると、

  • 労働の対償(労働した対価)としてもらうもの
  • 名称のいかんを問わない(賃金、給料、手当、賞与、基本給、ボーナス、退職金など)
  • 使用者が労働者に支払うもの(原則、チップはお客から労働者に支払われるので賃金ではない)

ただし、慶弔見舞金などのように恩恵として支払う場合は賃金となりません。しかし、

  • 慶弔見舞金等を就業規則に定めている場合
  • 慶弔見舞金等を就業規則に定めていなくても(従業員が10名以下の場合など)、すべての労働者に、慣例的に支払われている場合

は、賃金となります。

労働基準法第39条では、「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」としています。

この出勤率については、次の式で計算します。

(出勤率)=(出勤した日数)/(全労働日)

ただし、次の日については、全労働日に含みません。

  1. 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であって、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でない日(例:不可抗力による休業日、使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日、正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日など)
  2. 代替休暇(労働基準法第37条第3項に定められた休暇)を終日取得した日

また、次の日については、出勤したものとして計算する必要があります。

  1. 遅刻、早退などで一部でも出勤した日
  2. 業務上傷病にかかり療養のため休業した期間
  3. 育児・介護休業法に定める育児休業又は介護休業をした期間
  4. 産前産後の休業期間
  5. 年次有給休暇を取得した日

労働基準法第39条では、「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」としています。

ここでいう「継続勤務」とは、労働契約が存続している期間、すなわち、在籍期間をいいます。

これは、勤務の実態に即して、実質的に判断すべきものとされており、次の場合には、実質的に労働関係が継続している限り継続勤務していると考えられ、勤務年数を通算する取り扱いがなされます。(昭63.3.14基発150号)

  • 定年退職後引き続き嘱託等として再採用している場合(退職金を支給した場合も含みます)。ただし、定年退職と再採用との間に相当期間があり、客観的に労働関係が断続している場合にはこの限りではありません。
  • 有期雇用者が雇用契約を更新され、6か月以上に及んでいる場合で、その実態より引き続き雇用されていると認められる場合。
  • 在籍出向の場合
  • 休職をしていた者が復職した場合
  • 契約社員やパート社員を正規社員に切り替えた場合
  • 会社が解散し、従業員の待遇等を含め権利義務関係が新会社に包括継承された場合
  • 全員を解雇し、所定の退職金を支給し、その後改めて一部を再採用したが、事業の実体は人員を縮小しただけで、従前とほとんど変わらず事業を継続している場合