労働基準法と労働安全衛生法の適用にあたっては、事業場を単位として、適用されます。

つまり、一つの事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定すべきであり、同一の場所にあるものは原則として一つの事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とされています。

例外としては、場所的に分散しているものであっても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力等を勘案して一つの事業場という程度の独立性が無いものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱うとされています。

ここで、事業場の独立性が問題となることがあります。

以下は、私の個人的な経験から推測した考えです。

まず、規模ですが、具体的には1、2名程度の少数と思われます。

また、組織的関連とは、その事業場の独立性の問題です。例えば、その事業場に労務管理上の責任者(役職者)がいる場合には、独立性が高いと考えられますし、別事業場である上位組織からの指示を受けて活動している場合には、独立性が少なく、組織的関連性が強いと考えられます。

事務能力とは、労務管理上の事務能力のことで、その事業場の労務管理上の事務をどの程度その事業場内で処理する能力があるかということです。例えば、給与計算は本社一括であれば、その事業場ではやっていないわけですし、出勤簿等の管理、賃金台帳や労働者名簿の調整等の労務管理上の事務処理能力、その他売上帳簿など、どの程度の事務処理能力があるのかということです。

このような点を総合的に判断し、事業場の独立性が判断されます。
よって、人数も少数で、責任者といえる役職者も常駐していない、事務処理も上位事業場任せ、ということであれば、その事業場は独立性がないと判断され、労働基準法と労働安全衛生法の適用に当たっては、上位事業場と一括して一の事業場として取り扱われます。

労働基準法と労働安全衛生法の両方ともに、法の適用については、事業場を単位として適用されます。

例えば、労働安全衛生法12条では、以下のように規定されています。

(衛生管理者)
第十二条  事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

ここで、「政令で定める規模の事業場ごとに」とありますように(ここでの「政令で定める規模」=常時50人以上の労働者使用する規模のため)、「常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに」選任義務があるわけです。

もう一つの例えですが、労働基準法89条には、以下のように規定されています。

(作成及び届出の義務)
第八十九条  常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

労働基準法の適用は、事業場単位ですので、例えば、
A事業場 8人
B事業場 7人
C事業場 6人
のように、事業場が3か所ある会社であっても、就業規則の作成義務は生じません。

労働基準法第108条では、「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」としています。

賃金台帳に記入する事項とは、次の事項です。

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金計算の期間
  • 労働日数(1か月を超えて引き続き使用される者を除く日雇労働者については記入不要。年次有給休暇については労働日数として記入する。(昭23.11.2基収381号))
  • 労働時間数(管理監督者などの労働時間の適用除外者については記入不要)
  • 時間外労働時間数及び休日労働の時間数、深夜労働時間数
  • 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額(現物給がある場合はその評価額)
  • 賃金の一部を控除して支払った場合はその控除額

宿日直勤務の時間は断続的業務にあたるので、労働日数及び時間の欄、休日労働日数及び時間の欄には記入する必要はないとされています。(昭23.11.2基発3815号)

なお、この賃金台帳は、最後に記入した日から3年間保存しなければなりません。

また、労働基準監督署の臨検で調査の対象となることがありますので、必ず作っておきましょう。

労働基準法第107条では、「使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、日々雇い入れられる者を除く各労働者について調製しなければならない」としています。

この労働者名簿の記入事項は、次のとおりです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 履歴
  • 性別
  • 住所
  • 従事する業務の種類(常時30人未満の労働者を使用する事業では記入しなくてよい)
  • 雇入れの年月日
  • 退職の年月日とその理由(退職の理由が解雇の場合はその理由を含む)
  • 死亡の年月日とその原因

この労働者名簿は、労働者の死亡や退職、解雇の日から3年間保存しなければなりません。

また、労働基準監督署の臨検で調査の対象となることがありますので、必ず作っておきましょう。

労働基準監督署には、この労働基準法等の法律について取締りを行う「労働基準監督官」が配置されています。(労働基準法は罰則付きの法律です。)

そして、労働基準法には、以下の監督機関が定められています。

厚生労働省労働基準局

都道府県労働局

労働基準監督署

<労働基準監督官等の権限と義務>

労働基準監督官は、事業場や寄宿舎その他の附属建設物に臨検したり、帳簿や書類の提出を求めたり、使用者や労働者に対して尋問をしたりすることができます。

そして、労働基準監督官は、法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行うことができます。したがって、悪質な法違反については、検察庁へ送検をすることができます。

また、行政官庁(労働基準監督署長)は、労働基準法を施行するために必要があると認めた場合は、使用者や労働者に対して、必要な事項を報告させたり、出頭を命じたりすることができます。これについては、労働基準監督官も、同様です。

もちろん、労働基準監督官には、守秘義務が課されており、職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。労働基準監督官を退官した後も同様です。