労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準によります。(労基法13条)

(例1)労働契約時に「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」と契約した場合

労働基準法第37条では、法定労働時間を超えて時間外労働をさせた場合は、2割5分以上の割増賃金を支払わなければならないとしていますので、この例では労働基準法に違反しています。

このときは、「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」という契約は労働基準法に定める基準に達していないわけですから、この契約は無効となり、「時間外労働に対しては2割5分以上の割増賃金を支払う」という契約をしたことになります。(すなわち、使用者に割増賃金の支払い義務が生じます。)

(例2)パートタイマーとの契約時に「パートには年次有給休暇制度はない」と契約した場合

年次有給休暇について労働基準法39条では、雇入れ後半年間継続勤務して80%以上の出勤率の場合は、10労働日の年次有給休暇を与えなければならないとしていますので、この例では労働基準法に違反しています。

このときは、「パートには年次有給休暇制度はない」という契約は労働基準法に定める基準に達していないわけですから、この部分は無効となり、労働基準法で定める要件を満たしている場合は、法定日数の年次有給休暇を与える必要があります。

試用期間とは、従業員としての適格性の判定をするための期間のことです。通常は、試用期間を満了するときまでに、従業員として不適格であると認められた場合は、本採用されないことになります。

従業員をそのような不安定な地位におく試用期間には、必ず期間の定めをする必要があります。

例えば、就業規則等の中に「会社が、当社社員としてふさわしいと認めたときに本採用とする」というような、期間の定めのない規定は、公序良俗に反するものとして、無効になると考えられます。

なお、試用期間の長さについて、労働基準法等には、規定がありません。

ただし、ブラザー工業事件(名古屋地判昭59.3.23)では、「試用期間中の労働者は不安定な地位に置かれるものであるから、労働者の労働能力や勤務態度等についての価値判断を行うのに必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し、その限りにおいて無効であると解するのが相当である。」としています。この場合、最短6か月、最長1年3か月で会社が判断していました。

これらのことより、3か月から最長で6か月程度が一般的に認められる範囲と考えられます。

試用期間とは、いきなり本採用の正社員として採用するのではなく、3か月などの期間を定めて、試みに使用することを定め、その期間中に正社員として適格であるかないかを判断するための期間のことです。

この試用期間を設けることは、就業規則や労働契約書などに明記しておく必要があります。

労働基準法には、試用期間の定めに関する規定はありませんが、第21条の解雇予告の部分では、試の使用期間中の者が14日を超えて引き続き使用される者を解雇する場合は、30日前の解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要になることが規定されています。(逆に言えば、試用期間中の雇入れ後14日以内の解雇であれば、解雇予告または解雇予告手当の支払いは必要ありません。)

なお、試用期間中の者は不安定な状態におかれるため、試用期間の長さには充分注意が必要です。

労働契約とは、労働契約法第6条に次のように定められています。

第6条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

ここで、「使用者に使用されて」とは、使用者の指揮命令に従って労働に従事することと考えられます。

したがって、労働契約は、労働者が使用者の指揮命令に従い労働し、使用者はその労働に対して賃金を支払う契約であると考えられます。

また、この契約は、「合意することによって成立」しますので、口頭での合意でも問題ありませんし、必ずしも契約書は必要ありません。(もちろん、契約内容に後で問題がないように契約書はあった方がよいとは思います。)

試用期間とは、法的にどのような期間なのでしょうか。

 

試用期間については、その法的性質を定めた実定法規はありませんので、個々の契約の内容が重要と考えられています。

一般的には、試用期間中は、解約権留保付労働契約が成立していると考えられています。

この解約権留保付労働契約とは、試用目的に基づく解約権(本採用拒否などの条件にあてはまった場合には、その解約権(すなわち解雇権)を行使することができる権利)が付けられてはいますが、本採用後とほぼ同様の労働契約が成立しているとする見解が有力です。

これによれば、本採用の拒否は、労働契約の一方的解約(解雇)を意味しているため、労働者は、その本採用拒否の適法性を争うことができます。

判例も同様の見解をとっており、①試用者を一般従業員と同一職務に従事させていること、②労働条件に間違いがないこと、③本採用時に特別の手続がとられていないことなどから、試用期間を解約権留保付の労働契約関係と判断しています。

一般に、この試用制度は、職務遂行能力のテストのためという本来の意味での「試用」という部分は少なく、実際には、むしろ採用した以上は正社員として長期雇用に組み入れ、教育訓練や能力開発を行う期間という意味合いも強いのが実情です。

したがって、このような「試用」については、有期労働契約とは異なり、解約権が留保されているにしても、当初から期間の定めのない労働契約が成立していると解されています。