労働契約とは、労働契約法第6条に次のように定められています。

第6条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

ここで、「使用者に使用されて」とは、使用者の指揮命令に従って労働に従事することと考えられます。

したがって、労働契約は、労働者が使用者の指揮命令に従い労働し、使用者はその労働に対して賃金を支払う契約であると考えられます。

また、この契約は、「合意することによって成立」しますので、口頭での合意でも問題ありませんし、必ずしも契約書は必要ありません。(もちろん、契約内容に後で問題がないように契約書はあった方がよいとは思います。)

試用期間とは、法的にどのような期間なのでしょうか。

 

試用期間については、その法的性質を定めた実定法規はありませんので、個々の契約の内容が重要と考えられています。

一般的には、試用期間中は、解約権留保付労働契約が成立していると考えられています。

この解約権留保付労働契約とは、試用目的に基づく解約権(本採用拒否などの条件にあてはまった場合には、その解約権(すなわち解雇権)を行使することができる権利)が付けられてはいますが、本採用後とほぼ同様の労働契約が成立しているとする見解が有力です。

これによれば、本採用の拒否は、労働契約の一方的解約(解雇)を意味しているため、労働者は、その本採用拒否の適法性を争うことができます。

判例も同様の見解をとっており、①試用者を一般従業員と同一職務に従事させていること、②労働条件に間違いがないこと、③本採用時に特別の手続がとられていないことなどから、試用期間を解約権留保付の労働契約関係と判断しています。

一般に、この試用制度は、職務遂行能力のテストのためという本来の意味での「試用」という部分は少なく、実際には、むしろ採用した以上は正社員として長期雇用に組み入れ、教育訓練や能力開発を行う期間という意味合いも強いのが実情です。

したがって、このような「試用」については、有期労働契約とは異なり、解約権が留保されているにしても、当初から期間の定めのない労働契約が成立していると解されています。

本採用拒否とは、どのような場合をいうのでしょうか。

また、本採用拒否が許される場合とは、どのような場合をいうのでしょうか。

 

本採用拒否とは、会社が試用期間中及び試用期間満了時に試用者を本採用しないことをいいます。

試用期間中の労働契約は、解約権留保付労働契約と考えられており、試用期間満了前の本採用の拒否や解約はこの解約権の行使、すなわち、解雇を意味しています。

したがって、本採用拒否であっても「解雇」であることにかわりはないので、労働契約法第16条より、解雇は客観的に合理的な理由が必要となります。

労働契約法第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

しかし、この本採用拒否は、通常の解雇と全く同じではありません。

この点について、判例(三菱樹脂事件 最大判昭和48.12.12)は、試用期間における留保解約権は、使用者が採否決定に際して、入社前の時点では、試用者の適格性に関する調査や資料の収集を十分にできないため、入社後における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨で設定されるものであるから、この留保解約権の行使は、通常の解雇より広い範囲で認められると判断しています。

これによれば、使用者は、入社後の調査により判明した事実を理由として本採用を拒否することも許されると考えられます。

元々試用期間の趣旨は、本採用のための観察期間としての性格を持っていますので、職務遂行能力や適格性の判断に基づく留保解約権が、通常の解雇に比べて、より広く認められています。

したがって、従業員としての資質や協調性に欠け、注意されても改める姿勢を見せず、将来にわたって改善の見込みがないような場合は、本採用の拒否が適法とされる場合があります。

しかし、職務遂行能力について、指導や教育によって是正可能な能力不足等を理由とする本採用拒否は許されません。

また、中途採用者についても同様ですが、中途採用者である以上、新卒者に比べて、職務能力や適格性がよりシビアに判断され、その結果、この解約権行使の範囲が広く考えられることがあります。

求人票の労働条件と実際の労働条件が食い違った場合には、法的にはどのように判断されるのでしょうか?

 

求人票の労働条件が実際の労働条件と食い違った場合に問題となるのは、いつ労働契約が成立したのかということです。

労働契約上の労働条件とは、労働契約が成立した際に明示された労働条件のことをいいます。

法的には、求人票は、会社からの労働者の募集、すなわち、労働契約の申込みの誘引にすぎないと考えられており、それに労働者が応募したのが、労働契約の申込みであり、会社からの採用(内定)通知がその申込みに対する承諾で、その時点で初めて労働契約が成立すると考えられています(大日本印刷事件 最二小判昭和54.7.20)。

したがって、会社が求人票で労働者を募集する時点では、まだ労働契約は成立していないため、この求人票の内容が確定的な労働条件となるわけではありません。

特に、求人票の賃金額については、求人票を提出する際の現行賃金額(見込額)を明示しているにすぎません。

しかし、入社時点の際などに、会社が求人広告等の労働条件を確定的に表示した場合は、それが労働契約内容となり、労働者はその履行を請求できると考えられます。

※ 入社時点などに労働条件を明示していない場合には、求人票の労働条件が労働契約の内容となることもありますので、入社時には必ず書面(労働条件通知書)で労働条件を明示しましょう。

これに対して、入社時点の際などに、会社が求人広告と異なる労働条件を新たに提示し、これに労働者が同意した場合は、その労働条件が契約内容となります。

ただし、その場合でも、会社は、労働条件変更の理由や変更後の内容について誠実に説明し、労働者の自由意思によって同意してもらう必要があります。

この点について、労働契約法第8条では「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定しています。

なお、求人票の賃金額は、あくまで見込み額であり、確定額ではありませんので、賃金確定額が見込額より低かった場合であっても、労働者に見込額どおりの請求権が生じるわけではありません(八洲測量事件 東京高判昭和58.12.19)。

会社は新しい方を雇い入れるときには、どのような条件で雇うのかという約束を交わします。この約束のことを労働契約といいます。

労働基準法第15条では、会社が従業員を雇い入れるとき、すなわち従業員と労働契約を結ぶときは、その従業員に対して次の労働条件を明示しなければならないと定めています。

 

<必ず明示しなければならないこと>

・労働契約の期間(正社員など期間の定めがないときには「期間の定めなし」。期間がある場合は、「○年○月○日から1年間」「○年○月○日から○年○月○日まで」など)

・期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新するのか、しないのか。また、更新する可能性がある場合には、どのような基準で更新するのか、又はしないのかの判断基準。たとえば、「契約期間満了時の業務量、本人の勤務成績、態度、能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況で判断する」など)

・仕事をする場所、仕事の内容

・仕事の始めと終わりの時刻※、残業があるのかないのか(有無)、休憩時間※、休日※、休暇※、就業時転換(交替制勤務のローテーションなど)※

・給料の決定・計算・支払の方法※、給料の締切・支払の時期※、昇給※

・退職に関すること(解雇の理由を含む。どのような場合に退職となるのか(退職の事由)また、どのような場合に解雇となるのか(解雇の事由))※

 

<定めがあるときは明示しなければならないこと>

・退職手当(退職金の決定、計算方法、支払方法など)※

・臨時に支払われる給料※、賞与やボーナスなど※、最低賃金額※

・従業員に負担させる食費や作業用品など※

・安全及び衛生※

・職業訓練※

・災害補償※

・表彰及び制裁(懲戒ともいいます)※

・休職※

 

このうち、<必ず明示しなければならないこと>の昇給以外の項目については、書面で明示しなければなりません。

書面で明示しなければならないことについては、「労働条件通知書」を利用するのがよいでしょう。

「労働条件通知書は、厚生労働省ホームページ労働基準法関係主要様式よりダウンロードできます。

また、上記の※印がついているものは、就業規則に規定してあるはずですから、就業規則がある会社ではそのまま就業規則を渡せばよいことになります。

※印以外の項目については、別途書面で明示が必要です。

この労働条件の明示をしていなかったために、労使のトラブルに発展する場合もあります。

めんどくさいということで、労働条件などをすべて口頭で済ませてしまう場合も多々見受けられますが、後になって、「言った、言わない」のトラブルの元になりかねません。

法律に規定されているからという消極的な理由からではなく、トラブルを未然に防ぎ、入社した従業員にやる気をもって働いてもらうために、ぜひとも労働条件の明示義務は果たしたほうがよいと考えます。