試用期間とは、法的にどのような期間なのでしょうか。

 

試用期間については、その法的性質を定めた実定法規はありませんので、個々の契約の内容が重要と考えられています。

一般的には、試用期間中は、解約権留保付労働契約が成立していると考えられています。

この解約権留保付労働契約とは、試用目的に基づく解約権(本採用拒否などの条件にあてはまった場合には、その解約権(すなわち解雇権)を行使することができる権利)が付けられてはいますが、本採用後とほぼ同様の労働契約が成立しているとする見解が有力です。

これによれば、本採用の拒否は、労働契約の一方的解約(解雇)を意味しているため、労働者は、その本採用拒否の適法性を争うことができます。

判例も同様の見解をとっており、①試用者を一般従業員と同一職務に従事させていること、②労働条件に間違いがないこと、③本採用時に特別の手続がとられていないことなどから、試用期間を解約権留保付の労働契約関係と判断しています。

一般に、この試用制度は、職務遂行能力のテストのためという本来の意味での「試用」という部分は少なく、実際には、むしろ採用した以上は正社員として長期雇用に組み入れ、教育訓練や能力開発を行う期間という意味合いも強いのが実情です。

したがって、このような「試用」については、有期労働契約とは異なり、解約権が留保されているにしても、当初から期間の定めのない労働契約が成立していると解されています。

本採用拒否とは、どのような場合をいうのでしょうか。

また、本採用拒否が許される場合とは、どのような場合をいうのでしょうか。

 

本採用拒否とは、会社が試用期間中及び試用期間満了時に試用者を本採用しないことをいいます。

試用期間中の労働契約は、解約権留保付労働契約と考えられており、試用期間満了前の本採用の拒否や解約はこの解約権の行使、すなわち、解雇を意味しています。

したがって、本採用拒否であっても「解雇」であることにかわりはないので、労働契約法第16条より、解雇は客観的に合理的な理由が必要となります。

労働契約法第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

しかし、この本採用拒否は、通常の解雇と全く同じではありません。

この点について、判例(三菱樹脂事件 最大判昭和48.12.12)は、試用期間における留保解約権は、使用者が採否決定に際して、入社前の時点では、試用者の適格性に関する調査や資料の収集を十分にできないため、入社後における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨で設定されるものであるから、この留保解約権の行使は、通常の解雇より広い範囲で認められると判断しています。

これによれば、使用者は、入社後の調査により判明した事実を理由として本採用を拒否することも許されると考えられます。

元々試用期間の趣旨は、本採用のための観察期間としての性格を持っていますので、職務遂行能力や適格性の判断に基づく留保解約権が、通常の解雇に比べて、より広く認められています。

したがって、従業員としての資質や協調性に欠け、注意されても改める姿勢を見せず、将来にわたって改善の見込みがないような場合は、本採用の拒否が適法とされる場合があります。

しかし、職務遂行能力について、指導や教育によって是正可能な能力不足等を理由とする本採用拒否は許されません。

また、中途採用者についても同様ですが、中途採用者である以上、新卒者に比べて、職務能力や適格性がよりシビアに判断され、その結果、この解約権行使の範囲が広く考えられることがあります。

労働契約の終了(労働契約の解除)には、どのようなものがあるのでしょうか。

会社に採用するということは、法的に考えると、「労働契約の締結」となります。
その反対に、会社を辞めてもらうということは、「労働契約の終了(労働契約の解除)」となるわけです。

 

この「労働契約の終了」は、大きく分けて、次の三つの形になります。

① 一方的に会社側から労働契約を終了させる場合

法的には、これを「解雇」といいます。

② 一方的に労働者側から労働契約を終了させる場合

一般的には、これを「辞職」といいます。

③ 双方が合意して、労働契約を終了させる場合

一般的には、これを「(合意)退職」といいます。

 

ただし、この双方が合意して労働契約を終了させる場合については、さらに細かく分けることができます。

③-① 会社側から終了の働きかけがあり、労働者がそれに同意した場合

具体的には、会社から退職勧奨(退職を勧めること)を行って、労働者がそれに同意して退職するような場合です。したがって、この退職勧奨は、法的に①の「解雇」とは異なります。

③-② 労働者側からの終了の働きかけがあり、会社がそれに同意した場合

具体的には、労働者からの退職の申出、退職願の提出等があり、それに会社が同意して退職するような場合です。したがって、この場合には、法的に②の「辞職」とは異なります。

(例えば、「辞職」の場合はその撤回はできませんが、「退職の申出」の場合は会社(人事決定権がある方)が同意するまでの間はその撤回が可能であると考えられています。)

③-③ その他就業規則や労働契約で定められている労働契約の終了の事由に該当する場合

具体的には、

  • 契約期間満了による退職(これも退職であり、解雇ではありません。「雇止め」といいます。)
  • 定年退職
  • 休職期間満了による退職

などがあります。

 

これらは、就業規則や労働契約に定めがあって、ある一定の条件(解除条件)が成立すると、その契約が解除、すなわち終了するというものです。

例えば、契約期間満了による退職は、もともと労働契約で契約の期間が定められており、その契約が更新されなかった場合には、契約は終了します。

この分類は、私がわかりやすく考えるために分類したものであり、一般的な考え方(書籍等)とは異なっています。しかし、一般の方が、「解雇」にあたるか否かなどを考える場合には、とても役に立つ分類だと考えています。

Q:先日、当社に労働基準監督署の調査が入りました。これはどうもある従業員が、労働基準監督署に駆け込んだようなのです。このような困った従業員は解雇しようと考えているのですが、問題がありますか?

 

A:労働基準法104条には、「労働基準法や労働基準法に基づいて発する命令に違反する事実がある場合は、労働者は、その事実を行政官庁(労働基準監督署)や労働基準監督官に申告することができる」としてします。

労働基準法は、労働者が労働基準監督署などに駆け込むことを認めているのです。

また、同条2項に「使用者は、この申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない」としています。

ここでいう「不利益な取扱い」とは、解雇はもちろん、配置転換(配転や転勤、出向等)、降格、減給、昇給停止、出勤停止、有期雇用契約の更新拒否などがこれにあたります。

したがって、労働基準監督署に駆け込んだ従業員をそのことを理由として解雇などの不利益な取扱いをすることはできません。