11月第2週目、過労死事件を契機に、電通本社等に労働基準法違反の容疑で東京労働局による強制捜査が入ったことが報じられています。

この電通問題、なにが違法なのでしょうか。

そもそも、労働基準法32条では、使用者に対して、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないとしています。そして、これに違反すると罰則の適用があります。

ただし、時間外及び休日労働に関する労使協定(これは労働基準法36条に規定されているため、「36協定」と呼ばれています。)を締結し、労働基準監督署に届け出れば、その協定で定めた時間数まで残業させることができます。この36協定の届出無しに、または、この36協定で定めた時間数をオーバーして残業させた場合には、違法な時間外労働とされ、前述同様に罰則の適用があります。

この36協定で締結する残業時間数には、原則的な限度が設けられており、1か月は45時間とされています。しかし、この限度には例外があり、繁忙期などについて、特別条項で別に定めをおいた場合には、この45時間を超えて(例えば80時間など)協定することが認められています。

ただし、上限なく何時間でも協定してもよいわけではなく、80時間を超えて協定した場合には、今度は長時間労働による労災(健康障害)の危険性があることから、36協定の届出時に80時間以内とするように労働基準監督署より指導がなされます。

電通の場合、この特別条項で定めた時間数が1か月70時間でしたが、実際にはこの時間数を大幅に超えた時間数の残業がなされている疑いがあるようです。このため、東京労働局による強制捜査を受けているようです。ただ、通常、労働基準監督署の調査・指導の場合には、「捜査」といわず、「臨検」といいますが、今回は「捜査」といわれていますので、労働基準法違反が見つかった場合には、検察庁に送る「送検」(その後は刑事裁判になります。)が前提になっているようです。

以上のように、残業代(割増賃金)を支払っているかどうかにかかわらず、36協定で定めた時間数を超えて労働させた場合には、違法な時間外労働とされます。

当然ながら、違法な時間外労働かどうかにかかわらず、残業させた時間数に応じた残業代(割増賃金)を払わなかった場合にも、労働基準法違反となり、罰則の適用がありますし、その労働者から民事的な賃金支払請求を受けることになります。

多数の労働者を使用する会社(事業場)では、その労働者が就業する上で守らなければならない規律や、賃金、労働時間などの労働条件について、具体的な規則を設けています。これが就業規則です。

就業規則は、会社から見れば、多数の労働者との労働契約を集合的に処理するものとして、一律に労働条件を定めたり、職場の規律を定めたりすることができますので、職場の規律維持を目的に作成されます。

また、就業規則は、その事業場の労働条件の最低基準を定めたものとしての意義も有しています。

労働基準法89条には、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、一定の事項について就業規則を作成し、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届出なければならない旨が定められています。

労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準によります。(労基法13条)

(例1)労働契約時に「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」と契約した場合

労働基準法第37条では、法定労働時間を超えて時間外労働をさせた場合は、2割5分以上の割増賃金を支払わなければならないとしていますので、この例では労働基準法に違反しています。

このときは、「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」という契約は労働基準法に定める基準に達していないわけですから、この契約は無効となり、「時間外労働に対しては2割5分以上の割増賃金を支払う」という契約をしたことになります。(すなわち、使用者に割増賃金の支払い義務が生じます。)

(例2)パートタイマーとの契約時に「パートには年次有給休暇制度はない」と契約した場合

年次有給休暇について労働基準法39条では、雇入れ後半年間継続勤務して80%以上の出勤率の場合は、10労働日の年次有給休暇を与えなければならないとしていますので、この例では労働基準法に違反しています。

このときは、「パートには年次有給休暇制度はない」という契約は労働基準法に定める基準に達していないわけですから、この部分は無効となり、労働基準法で定める要件を満たしている場合は、法定日数の年次有給休暇を与える必要があります。

解雇予告手当や休業手当、年次有給休暇中の賃金などは、平均賃金を元にして計算します。(労基法12条)

1.原則的な平均賃金の計算方法

平均賃金の計算方法は、原則として

(平均賃金)=(算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金の総額)/(算定事由発生日以前3か月間の総日数)

で計算します。

※賃金締切日があるときは、原則として、その直前の賃金締切日から起算します。

例えば、算定事由発生日が6月13日で、賃金締切日が5月31日の場合、3月1日から5月31日の期間で平均賃金を算定します。

この平均賃金は銭単位未満の端数が生じた場合は、切り捨てます。(昭22.11.5基発232号)

実際に、解雇予告手当や休業手当、年次有給休暇中の賃金などを支払う場合は、1円未満の端数を四捨五入します。(通貨の単位及び紙幣の発行等に関する法律)

平均賃金を計算するときは、次の期間とその賃金は、「総日数」と「賃金の総額」の両方から控除します。

  • 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
  • 女性が産前産後の休業をする期間
  • 育児休業又は介護休業した期間
  • 試みの使用期間

また、算定期間中の次の賃金は「賃金の総額」から控除します。

  • 臨時に支払われた賃金(私傷病手当や見舞金など)
  • 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの(現物給与)

2.請負や日雇労働者などの場合の平均賃金の計算方法

平均賃金を算定するとき、賃金を日、時間によって算定する場合や出来高払いその他の請負制によって定められる場合は、原則的な平均賃金の計算方法とは少し異なります。

原則的に平均賃金を計算した金額と次式を計算した金額のいずれか高い方が平均賃金となります。

(最低保障額)=(算定期間中の賃金の総額)/(算定期間中の実際に労働した日数)*60/100

また、賃金の一部が月、週、その他の一定の期間によって定められている場合は、次式を使用します。

(最低保障額)=(その部分の賃金の総額)/(その期間の総日数)+(算定期間中の賃金の総額)/(算定期間中の実際に労働した日数)*60/100

また、これが日雇労働者の場合は、次式を使用します。

(平均賃金)=(1か月間に支払われた賃金総額)/(1か月間にその事業場で実際に労働した日数)*73/100

これで算定できない場合は、

(平均賃金)=(1か月間に同一業務に従事した日雇労働者に支払われた賃金総額)/(1か月間にその事業場で労働した日数)*73/100

となります。

3.雇い入れ3か月未満の場合

雇い入れ後3か月に満たない者については、計算期間は雇い入れ後の期間になります。

労働基準法でいうところの賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。

整理すると、

  • 労働の対償(労働した対価)としてもらうもの
  • 名称のいかんを問わない(賃金、給料、手当、賞与、基本給、ボーナス、退職金など)
  • 使用者が労働者に支払うもの(原則、チップはお客から労働者に支払われるので賃金ではない)

ただし、慶弔見舞金などのように恩恵として支払う場合は賃金となりません。しかし、

  • 慶弔見舞金等を就業規則に定めている場合
  • 慶弔見舞金等を就業規則に定めていなくても(従業員が10名以下の場合など)、すべての労働者に、慣例的に支払われている場合

は、賃金となります。